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自然保護のカタチ その2 [山]

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沢をつめてから、急斜面をロープ伝いに登っていきました。
手掛かり・足掛かりが無い斜面ですから、無理やり登ろうとすれば、傍らの草を掴んで抜いてしまったり踏みつていくことになるでしょう。
このようなことを防ぐために、自然保護協議会の方々がモニター登山会のために設置してくださったものです。
山頂直下にやや平坦な場所があり、そこで一休みです。
足元には紫のエゾフウロがたくさん咲いており、注意して歩かないと踏みつけてしまいそうでした。
雨が降っていて下が濡れているので立ったままでの休憩ですが、たとえ晴れていたとしても、下手に座ることはできないでしょう。
山頂は狭いので、少人数ずつ交代で登りました。
本物の山頂は石灰岩の岩頭の頂点ですが、ここに行くためにはせっかく回復しかけた植生を痛めつけることになるため、山頂標識を石灰岩の基部に下ろしてきてあります。
かつて、登山道となっていた岩頭基部伝いにつけられていた踏跡は、初めて来た者には全くわからなくなっていました。

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一億三千年前という大昔に、南太平洋の珊瑚礁であったものが地殻変動により北上し、褶曲運動により地表付近に現れ、侵食作用を受けて石灰岩の岩頭が屹立する現在の山の形になったそうです。
石灰岩地質はアルカリ性に偏った土壌のため、固有な植物が発達しやすく、この山にもいくつかの特産種が生育しています。
そればかりでなく、この山は標高1000mを少し超えるくらいなのに、山頂付近では高山帯の植物が、それ以下では平地~亜高山帯の植物が混在するという極めて珍しい植生を持っています。
かつては交通が不便であったため、ごく一部の人しかここに入ることはありませんでしたが、国道の開通により、アクセスが容易になり、多数の登山者が押し寄せるようになりました。ルート以外への立ち入りや踏みつけや表土流出により植生が破壊されるようになりました。また、根こそぎ珍しい植物を盗っていく盗掘者も後を絶たず、やむを得ず入山制限に至りました。

自然保護協議会の目指しているところは、特定の固有種や絶滅危惧種の植物だけでなく、この山全体の植生や環境を守って未来に遺していくことです。このために、モニター登山会を開くだけでなく、日々、ボランティアで登山口までの林道整備や外来植物の除去や盗掘の監視等を行っています。
入山制限から10年を経て、植生の回復は進んできていますが、まだ完全ではありません。制限を撤廃すればすぐに荒れてしまうのは目に見えています。

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往復4時間余りの山行でしたが、この山に登るために自然保護協議会の方々の日々の地道な努力があったことを改めて感じました。
植生や環境保全のための入山制限は必要と思っても、観光収入減につながることなどから実施に踏み切れないところも多いようです。
制限が無いから自由というのではなく、私達山に入る者は、その山の特徴を知り、できるだけダメージを与えないように心がけていかなくてはなりません。

最後に、崕山自然保護協議会の皆様に貴重な機会を与えていただいたことを感謝いたします。
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umiko

貴重な登山をなさったのですね。
自然は尊いもの大事にしたいです。
by umiko (2009-06-21 00:33) 

ばん

山登りを高校生の時に経験しました。今考えれば、危険と隣り合わせだったと思います。でも懐かしい人生の縮図のように思っています。(伴)
by ばん (2009-06-21 00:54) 

Rera

どこも盗掘は大きな問題です。
ここ道東にある西別岳も盗掘の跡があり無惨な姿をさらしています。
悲しくなります。
でも、ここも地元の人たちが保護や再生をしています。
感謝ですね。
by Rera (2009-06-21 08:25) 

doudesyo

おはようございます。
うーん、困ったものですね。人間が人間を規制しないと自然がなくなる。植物だけでなく、動物も同じですね。近年、私の生活環境では、野鳥たちがどんどん減っている感じを受けています。昨年野鳥たちが夏に子孫繁栄に来ていたところの山が坊主になってしまったりと人間のやる事は脅威です。
by doudesyo (2009-06-21 08:27) 

yuki999

最近自然に触れていないので
うらやましいです。
by yuki999 (2009-06-21 17:18) 

orange-beco

umiko様、こんばんは。
ありがとうございます。
いつまでも皆が楽しめるような環境を保持していくためには一人一人がマナーを守っていくことが大切ですね。
by orange-beco (2009-06-21 17:50) 

orange-beco

ばん様、こんばんは。
人生はいつだって危険と隣り合わせです・・・ただ、普段は気づかないだけ(笑)。何重もの安全に囲まれているような今の時代だからこそ、そういう体験は必要なのではないかと思います。
by orange-beco (2009-06-21 17:53) 

orange-beco

Rera様、こんばんは。
そこにあってこそ美しいはずなのに、再生を考えない盗掘は本当に困ったものです。
保護や再生に尽力されている方々には本当に頭が下がります。
by orange-beco (2009-06-21 18:01) 

orange-beco

doudesyo様、こんばんは。
鳥や動物ではレッドデータブックで希少種に分類されているにもかかわらず、狩猟の対象になっていたり、矛盾を感じることが多いです。
生息の実態を明らかにして環境保全を図っていかないと、いつの間にか絶滅していたということになりかねないですね。
by orange-beco (2009-06-21 18:08) 

orange-beco

yuki999様、こんばんは。
普段自然にふれる機会の少ない方々にこそ、現状を知っていただくことができれば幸いです。
by orange-beco (2009-06-21 18:12) 

ひげ

orangeさん おばんです。

あるがままが一番いいのでしょうが・・・それではすまなくなってきているのは人というものがいるから・・・。釧路川でもカヌーネットワークの中でガイドラインの更なる見直しを始めようと声があがってきました・・・・。
まずはガイドの意識改変からということです。



by ひげ (2009-06-21 21:14) 

orange-beco

ひげ様、お晩です。
特に環境保全が必要な地域では、生態系にダメージを与えにくいようにルートを設定したり啓蒙を行う上で、地域のガイドの方々が果たす役割は重要になってくるのではないでしょうか・・・。
また、ビジターの方も環境保全に必要な経費があるという自覚が必要と思います。
by orange-beco (2009-06-21 23:40) 

やまがたん

自然保護って凄く大事だと思います
私もホントにいい場所は誰に教えないようにしています
人が来るとゴミであふれ汚されてしまうからなんです・・・・
もうちょっとモラルの向上、それに勤めて欲しいと思います
いつもご訪問ありがとうございます☆
by やまがたん (2009-06-22 20:51) 

orange-beco

やまがたん様、こんばんは。
意図的なものでない、うっかり落としてしまった小さなゴミでも多人数だと目だってしまいますね。やはり一人一人が気をつけていくしかないでしょう。それと、子供の頃からこういことはしっかり教えていかなくてはと思います。
by orange-beco (2009-06-22 21:43) 

やまがたん

人が自然に入ること自体が、破壊につながってしまう
故意ではないにせよ、そうだということを皆で意識して
もらえる様になって欲しいと思います
いつもご訪問ありがとうございます☆
by やまがたん (2009-06-23 06:33) 

umiko

本当にそうですね。
私の愛する山が宅地造成だの 開発だので壊されていくのに
何もできないし 目の前にあった竹林でさえ守ることができなかった
そんな自分の微力さに落ち込みもしました。
自然は尊いともっと大声で言える勇気が欲しいです。
by umiko (2009-06-23 09:52) 

orange-beco

やまがたん様、umiko様、ありがとうございます。
自然にダメージを与えずに共存していければと思います。
宅地造成で失われつつある自然・・・難しい問題です。
今、私が住んでいる所も10年くらい前は畑だったのか、森だったのか・・・
都市近郊では人間の生活の方が優先されがちです。
by orange-beco (2009-06-23 23:39) 

ruripiyo

入山制限を始めて10年経っても、植生の回復が完全ではないんですか。
荒れるのはあっという間でも、壊れた自然を元に戻すには、とても長い時間がかかるのですね。
厳しい規制や管理があって初めて自然が守られている所もあるという事を知りました。
人と自然の関わり方、難しい問題ですが、本当に考えさせられますね。
by ruripiyo (2009-06-24 00:48) 

orange-beco

ruripiyo様、こんばんは。
厳しい環境ですから、一度バランスが崩れると、弱い植物はなかなか回復することができません。特に根こそぎ盗掘されてしまうと、回復は難しいでしょう。
組織培養で植物自体を継代・保存していくことは可能なものもあるかもしれませんが、自生地を遺していかなければならないですね。
by orange-beco (2009-06-26 00:50) 

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